2009年1月12日月曜日

「海図」は生きている!! 日本水路協会(羽田空港)見学 海上保安庁見学記 その2



 「海図」=海の地図を作成する我が国官庁は国土交通省の外局、海上保安庁海洋情報部でることは先のBlogで書いたと思う。今回、見学したのはこの「海図」が最新の地図として更新されている様子を学生に見てもらいたくて見学会を企画した。今回は、慶應義塾の若き学生もANA のメインテナンスセンターの見学と兼ねていたので、同時開催で実施。


「海図」は印刷・発行後も船の運航上、最新の海事情報になっていなくてはならない。「生きている海図」と表現したのは、そのような意味あいからである。毎週、海上保安庁から「水路通報」が海事関係者に送られる。港湾の工事、灯台の補修、沈船情報などなど・・・。
航海士始め「海図」管理者はその最新の状態に「海図」を保つ事を求められる。
従って、「海図」の販売元である日本水路協会では、売り物の「海図」を常に最新の状態にすることが義務づけられている。


『「海図」は重い!!』海図用紙はその使用環境=航海士、船長による航行コースの度重なる書き込みに耐えなくてはならない。その為には、極めて高い紙質を求められる。何度も鉛筆、消しゴムで書いては消しても破れない、さらの、不用意にコーヒーや水をこぼしてもそれが原因では決して破れない・・・紙質が求められる。従って、重い!! 実際に「海図」の重みを学生に体験してもらいたくて実際に持ってもらった。約100枚で四六善全版の「海図」は10kgある。ズシリと重かった違いない。



 日本政府が発行する世界中の「海図」が羽田空港に成るとは・・・大変、興味深い。


「海図」の端には、海図番号、発行国、官庁、そしてどの「水路通報」まで修正されているかを記入した手書きの記録がある。これが、「海図」が生きているかの証拠となる。



いつもいつも、学生への説明をしていただいている元海上保安庁の海図主任編集官のI氏です。地図学会の重要なメンバーのお一人です。

東京湾の守り「東京湾海上交通センター(観音崎)」海上保安庁見学/訪問記 その3

*東京湾海上交通センター

ここでは主に東京湾の交通安全のために船舶のスピードや航路入港予定時刻の調整をしています。私はここで驚いたことが2つありました。1つ目は、ここでは航路から外れていたり、スピードが制限速度を超えていたりしても、忠告だけで捕まえることはできないということです。2つ目は、この東京湾では巨大船も通るのにもかかわらず普通に漁業が航路内で行われているということです。航路はそんなに広くないので危険!!本当にこの東京湾海上交通センターの方の役割の重要性を感じました(りさ)。

東京湾の出入りがあんなに激しいものとは初めて知り、驚きました。
管理する船の数に比べてセンターの規模が小さくて働いてらっしゃる方々の数も少
ない中、しっかり運営されていることから一人ひとりの責任と任務の大きさは計り
知れないものなのだなと思いました。
ひとつ間違えば、大事故や経済状況にも影響を与えかねないような環境や生の現場
を垣間見ることができて、非常に貴重な経験ができたと思います。(かな)



現代版、IT灯台、「東京湾海上交通センター(コールサイン:「東京マーチス」)」を自然地理学履修生の有志で訪問しました。






「東京海上交通センター」は県立公園の観音自然園地内にあって、明治期の最初の西洋灯台「観音崎灯台」のすぐ近くにあります。








観音崎の「東京湾海上交通センター」は東京湾だけではなく、海上交通の要所である瀬戸内海を中心に、関門海峡、来島海峡、備讃瀬戸、明石海峡と大阪湾のほか、名古屋港などにもあります。いずれも世界有数の海上交通量を誇る危険箇所です。1974年に東京湾の浦賀水道の中ノ瀬航路で起こったLPG/石油混載タンカー第十雄洋丸と鉄鋼貨物船の衝突による重油流失によって起こった火災で受けた日本経済の多大なる損害がこのセンター設置の発端です。



海上交通センターの主たる業務は、大型船や危険物搭載船の海上衝突事故を未然に防ぐことが主な任務です。「海上交通安全法」という法律で浦賀水道を通過する該当の船舶は事前に通報しなくてはなりません。


上の地図は国土交通省が作成した3次元の立体の浦賀海峡の海底地形模型。これは喉から手が出るくらい欲しいアイテムですね。

「東京マーチス」の使命は、大型船や危険物搭載船の浦賀水道航路の安全航行がその役目です。世界一を誇る「浦賀水道航路」の安全がいかに大切であるか? また、地道な航行管理業務の大切さを痛感した一日でした。


見学者の全員がセンターの屋上で記念撮影。今日はご案内ありがとうございました。
東京湾の海上安全を守る「縁の下の力持ち」・・・がんばれ!!!「東京マーチス」

これからもますます私たち、首都圏の4000万人の生活と安全を守ってください。
お願いしますーぅ。



東京湾を守る拠点 「第三管区横浜防災基地」(横浜港新港埠頭)その4

海上保安庁~第三管区海上保安本部(横浜海上防災基地)

 ここの資料館に何年か前に戦った北朝鮮の工作船や密輸された拳銃や麻薬が置いてありました。
結構リアルで怖かったです。本部では訓練用の大きな水槽や武術場、そして模擬船室という船の中を再現した部屋もありいろいろな事態を想定して訓練しているということがよくわかり面白かったです。中でも面白かったのは大型ヘリが搭載できる巡視船「やしま」の見学と、重油がもれてしまったときの対策の実験でした。巡視船は意外と狭くて、夜は真っ暗で…ここで何十日間も過ごしながら、常に何か問題は無いのか監視しなくてはいけないというのは想像以上に大変なことだろうと思いました。また船に搭載されているヘリコプターはちょうど整備中で裏側が見られて面白かったです。海上保安庁というと“海猿”の方を思い浮かべがちですが、こういった裏舞台で活躍する人たちもいるということを知ることができました。重油の排出事故には時と場合によって、重油を溶かしたり、油の拡散や漂流を防ぐために囲いを作ったり、繊維(?)みたいなものに絡めて取ったり…と、さまざまな対処の仕方があるということをビーカーで実際に実験しながら教えていただきました(りさ)。



 
海上保安庁「横浜海上防災基地」と大型ヘリ搭載巡視船「やしま」を見学

 

 講義も終わり夏休みに入りましたが、今年の履修学生は熱心です。6月に実施した「海図」を作成する海洋情報部(築地)に引き続き東京近辺の海上保安庁の施設見学の強い希望がありました。
 
 第一回目は、横浜港にある「横浜海上防災基地」。正式名称は、「第三管区保安本部横浜海上防災基地」で東京湾の海と海からの安全を守る重要な拠点である。




ドラマ/映画の「海猿」はここ横浜の海上防災基地でも撮影された!

第三管区保安本部に属する世界最大級の大型巡視船「しきしま」模型と実写(海上保安庁)



さあ、これから、今日の見学のハイライト、海上保安庁 第三管区横浜保安本部に属する我が国の大型巡視船「やしま」の見学です。今回、「やしま」が見学できるように防災基地の監理課の方の特別のご配慮で見学することができました。全長130m、総トン数3,500トン、2機のヘリコプターを搭載できる大型の巡視船、まさに「海の守り神」です。



第三管区の警備範囲は広く、遠くは小笠原海域から北は銚子沖から名古屋湾口から沖の鳥島までを含む「排他的経済水域」の全域という非常に広範囲な海域を担当しています。



第三管区保安本部が担任する海域

第三管区は茨城県から静岡県までにいたる沿岸水域・伊豆諸島や小笠原諸島からさらに南に位置する最南端の沖の鳥島や最東端の南鳥島の範囲の治安を守っている。(ゆき)
 


 まず、巡視船「やしま」のブリッジ(操舵室)を見学しました。展望が良いばかりではなく、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やECDIS(電子海図)、レーダーなど新鋭の航海機器が一杯並び、さながら軍艦のようでした。双眼鏡を使わせていただき、船は停泊中でしたが、航海中の気分で横浜港を見回すことができました。



ブリッジ(操舵室/船橋)から見た横浜港



「やしま」のブリッジで実際のチャートワーク(「海図」による航路の線引き)を保安官の方から説明を受けました。
2つの三角定規と鉛筆で船の進む方向と航路が次々に記入されて行きます。



写真は海上保安庁のホームページより

 巡視船「やしま」には2機のヘリコプター(ベル212)が搭載されていますが、見学した時は、一機が船内の格納庫(基地)内でバラバラになって整備されていました。一機は羽田航空基地で待機しているそうです。整備に当たる方々の真剣な眼差しとともに、日々の訓練の厳しさを思わせる緊張感が伝わって来ましたが、最後に記念撮影をさせていただき朗らかに質問などに答えていただきました。






横浜海上防災基地の見学

 防災基地内にある造波プールです。ここは「海猿」こと海上保安庁の潜水士の訓練をするプールです。洋上での救難業務は嵐の中の波高の高い中行われます。このプールでの訓練では、実際の海での救助活動のように行われます。特にこの施設には、実際に起こりうる状況に近づける為に、救難ヘリの風圧を再現できるように天井から強風が吹き下ろすファンまで取り付けられています。



 施設において潜水訓練する場所が「A水槽」「B水槽」「C水槽」と3つある。「A水槽」は25メートルプールのようなものです。しかしこのプールでは人工的に波を起こすことができる。また天井には大きなファンがあり、これにより空にヘリがあることを想定した訓練ができる。また床が可動式であるので訓練にあった深さの訓練も行うことかできる。





「B水槽」では本格的な潜水訓練が行われる場所である。壁にはいくつもの窓があり、ここで外から中の様子を伺うことができる。実際の『海猿』で使われた現場で、映画ではとても深い設定になっていたが実際は10メートルだそうです。「C水槽」は常に水が濁った状態に保っている水槽である。ここでは沈没した船から船員を救助・水の中での船の解体などの訓練が行われている。私たちが見たときは非常にきれいになっていたので実際どれだけ汚いのかが見てみたかったものである。



 模擬船室という訓練施設では、実際の救助訓練が行われる場所である。ここには70キロもするマネキンがあり、訓練士はこれを抱えて障害をくぐったり・登ったりします。

この海上防災基地は平常時は第三管区の横浜保安部の船艇の基地でると同時に、羽田空港にある「特殊救難隊(特救隊)」の訓練施設のほか、海難事故等に伴うオイル流出・拡散を食い止め、油を回収する「機動防除隊」の基地でもある。



 全国の海上保安で第三管区にしかなく全国を守っているのが機動防除隊である。現在その隊員数はたったの12名である。彼らの仕事は海上の事故により排出された油・有害液物質を取り除く作業を行っています。その除去法には以下のようなものがある。
 まず油回収装置といっていわゆる海の大きな掃除機みたいなものである。油の性質は水より軽いというもので、その性質を利用してこの装置で表面に浮いている油を吸ってしまうものである。
 油というのは水のなかでは分解されません。そこで油処理剤という薬品を使うことによって分解されない油は分解してしまう。これにより油は分解され水にだんだん溶けていき海底に沈んでいく。一瞬油が海底に沈んだら海を汚染させるのではないかと思うところだが、本来油は生物が死に地中で分解されできたものなのだからけっして汚染することなく自然に戻っていくのだ。この油処理剤は現在、生物や環境に対しては何も害を与えられていないとされているためよく活用されているそうだ。またこの薬品は海面上に流れ出た油の重度に合わせて濃さを変えているそうだ。
 海というのは波によって動いている。これでは除去する際に油はどんどん分散されてしまう。そこで便利なのがオイルフェンスである。これにより被害となった場所を囲ってしまい、油回収装置や油吸収マットなどで油を回収することが可能だ。
 油吸収マットというのは羊毛状で柔らかい繊維が並んでいる為、油だけを吸収する便利なマットである。しかしこれだけでは吸収できないほど量が多い場合は繊維一本が太く、チアリーダーが持つようなポンポンの形をしたものがここで活躍しこれで油を絡めてすくいあげる。機動防除隊というのは始めに述べたように日本において横浜の第三管区にしかいない部隊である。そのため例え日本の北の端っこ又は南の端っこで海上での油事故があるとしても彼らは出動します。彼らは時には世界でおきた油流出事故にも協力している部隊でもある。ここの部隊には今もなお女性の人はいないそうだ。



「機動防除隊」の隊員から回収機器の説明を受ける。

防災基地内には、全国で唯一のタンカーなど原油を搭載した船舶の海難事故に伴う油の流失による海洋汚染を防止する機動部隊の基地があります。名称は「機動防除隊」(http://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/93nst/)です。この部隊も東京湾で起こったタンカーの座礁事故の教訓で組織された部隊だそうで、全国で起こったオイル流出事故に対処する強力な部隊です。



薬剤による油質の分離する様子をデモンストレーションを受ける。



「機動防除隊」の勇壮(第三管区保安本部)



「機動防除隊」のエンブレム


昨年度(2007年度)は艦艇の「便宜供与」として「体験航海」も経験:

 昨年は、第三管区のご配慮により、実際の巡視船に乗せていただきました。ベイブリッジより奥(港の入り口より外)の海まで乗せていただきました。私たちの乗った巡視船は「のげかぜ」といい、巡視船の中でも小回りの利く船でだそうです。実際にその特性がでる360度回転を経験しました。傾きがすごかったです!!。この巡視船は二つの方法で操縦でき、一つは車のハンドルのように操縦する方法であり、もう一つが左右の手で左右別々のエンジンを操作するという真っ直ぐ進むのが難しい操作方法である。後者の操作は難しいが速く進むには非常に適している方法だそうだ。(ゆき)

日本とその周辺の「海」を守る海上保安庁 「羽田特別救難基地」見学記 その5

羽田空港の整備場地区にある「海上保安庁」施設見学1 その3


 今回はテレビと映画で有名になった「海猿」こと「海上保安庁特殊救難隊」の羽田基地を見学しました。映画で見たイメージとは違い冷静沈着、日本のどこへでも数時間の内にジェットとヘリを乗り継いで駆けつけ、海上の遭難船に乗り移ったり、すかさず潜水するという世界的に見ても極めて高度な救難技術を持つ集団である。ご自身も特救隊であった宮崎専門官から懇切丁寧な説明と施設見学の案内をしていただいた。



ここでは本物の”海猿”に会えました。この特殊救難隊は36人しかいなくて、しかも男性のみ。ちょっと迫力がありました。今までの救助活動の様子のビデオを見せてもらいましたが、本当に危険なところへ命がけで救助に行っていることがわかりました。その姿はかっこよくて素敵でした。ちなみに”海猿”の方々はモテるそうです。部屋の壁にはたくさん表彰もされていて賞状が掛かっていました。これからも気をつけて、頑張ってほしいです!!

それから、海上保安庁の見学はヘリの中を詳しく説明していただいたり、普段では絶対に知ることのできないようなことまで教えていただいたりして、得るものが多かったように思います。第一線で働いていらっしゃる方々に生でお会いできる機会で本当に勉強になりました。
(かな)




ザイル(ロープ)ワークも極めて重要な救難技術のひとつ



羽田基地の特救隊本部の見学では、特救隊が考案した様々な救出用の補助用具がいつ何時でも利用可能な状態に整理整頓され、いざという時のために羽田基地内の倉庫に保管されている。


特別救助隊の皆さんと・・・・記念写真です!!


海と陸の境はどこに?・・・・
「陸」を守る「県警察(警視庁)」と「海」を守る「海上保安庁」・・・
この違いをご存知でしたか?
川はどちらの範囲(所轄)?
答え:最初の橋が架かっていることこまでは海上保安庁の管轄あそうです!!!



2009年1月11日日曜日

すでに起こってしまった海難事故から1人でも多く、人を救出せよ!「特救隊」(通称「海猿」の最高峰)

「海上保安庁 特殊救難隊(特救隊)」の誕生


(海上保安庁提供)

昭和49年に東京湾で起こったタンカー事故を教訓に生まれた組織(隊員36名)全国の海上保安庁の潜水士のいわゆる「海猿」の頂点に立つ。羽田空港に「海上保安庁特殊救難基地」を設置した。守備範囲は北海道から沖縄までの日本が担当する海難救助の広大な海域をカバーする。あらゆる事故現場まで数時間で到達できる移動能力が要求される。隊員は、出動要請を受けると、羽田基地→小型ジェット機→地方の管区の航空基地→ヘリで現場に到着する。その時間はわずか数時間という。



見学では、基地の担当者から特殊救難隊の概要、誕生の経緯、訓練と実践の状況などを伺った。

今回の見学での感想

ダイアモンド・グレースの事故による重油流出事件

ダイヤモンドグレースは、原油257,042トンを積載し、船首19.39メートル船尾19.85メートルの喫水をもって、アラブ首長国連邦のダスアイランド港を発し、京浜港川崎区の京浜川崎シーバースに向かい、平成9年7月2日浦賀水道航路南方沖合で水先人が乗船し、警戒船2隻を配置してきょう導しながら、浦賀水道航路を通過後、東京湾中ノ瀬西端の浅所に乗り揚げた。
(海難審判庁データ)



座礁後のダイヤモンドグレースから流出した重油の拡散状況

東京湾と海上交通安全法の制定

海上交通安全法(昭和47年7月3日法律第115号)は、東京湾など「船舶交通がふくそうする海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行なうことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とする法律。」と言うことができる。

航路航行義務

 長さが50メートル以上の船舶と危険物搭載船舶は、航路を航行する義務があります。 なお、長さが50メートル未満の船舶には、航路航行義務はありませんが、仮に航路を航行する場合には、以下に掲載している交通ルールを守らなければなりません。

航路の航法

 浦賀水道航路は、航路の中央より右側を航行しなければなりません。(右側通航) 中ノ瀬航路は、北の方向に航行しなければなりなせん。(北の方向への一方通航)