海上保安庁海洋情報部(築地)の見学会 「5月の自然地理学の講義で扱った「海」の地理学を学ぶねらいで例年実施している海上保安庁海洋情報部の見学を 6月26日(木曜)の午後、見学希望者のみで実施した。今年で5年目を迎える訪問・見学である。F大学の学生は、見学態度が良いので、毎回歓迎される。今回は実施時期が遅れたこともあって、試験等も近づき、履修学生の都合が付かず参加が少なかった。
海洋情報部の歴史は今から130年前の日本帝国海軍水路部(海軍省水路局)がその発祥である。戦前は、日本の誇る「海軍」が世界の海を航海するために世界中の海の地図=「海図」を作成していた。」(太田)
海は自由に船で移動できると考えていたが実は陸のようにきちんと道路があり、交通ルールもあるんですね(驚き!)。だから、船のナビゲーションシステムが存在する。海洋情報部ではこれらの地図(海図)・海洋調査・マリンレジャー情報・防災情報などを逐一船員さんまた市民に情報を提供しているのです。(ゆき)

海洋情報部(旧水路部/戦前は海軍水路部)の歴史を語る「水路資料館」(財)日本水路協会

では、「海図」とい一言でいいますが、その種類は多種です。一般に「海図」には「航海用海図」「特殊図」「海の基本図」の3つのものがあるそうです。

「海の基本図」日本周辺 海洋情報部より
「航海用海図」には船員さんが必ず船に乗る際持っていなければならい海図であり、海の水深・浅瀬・灯台やブイなどの航路標識・陸上の建物の様子を示しています。これを持っていないことが発覚すれば事故が発生した場合、海難審判で重い罪になるそうです。かつ、この海図は随時変わるため船員は常に新しい情報に変えていかなければならないということがあります。これを「『海図』の現状維持」と言うそうです。現在、最新の技術で、船には電子海図(ECDIS)が設置されているという話です。

これは陸の自動車についているカーナビみたいなものだそうです。電子海図の主な表示機能は表示画面縮尺・自船の位置、方位、速度・変針点までの距離・安全水深・航路、変針点である。また各海の時間の様子も示すこともでき、夜の様子の「電子海図」の画面はとてもきれいでした。この夜の様子の海図で印象的に残ったのが、灯台の光の範囲がきちんと示されていたことだと思います。海洋情報部にあった電子海図は1台2000万円もする非常に高価な機器でした。現在の日本の法律ではいまもなお電子海図のみの運行は許されてなく、船員はやはり紙の海図も必ず持っていなければならないそうですが、2010年から国際条約で「電子海図」も紙「海図」と同等の法的な義務を果たす様になるとのことです。海外では既に、法律が進んでおり、電子海図があれば船を動かしてもいいようになっている国が多々あるようだ。

「特殊図」とは航海用海図に載っているもの以外の船員さんが必要とする海流図・潮流図・大圏航法図などがあります。
また、「海の基本図」とは海洋開発等の基礎となる情報を示した地図です。
始めに述べたように海図は絶えず変化する。それらの訂正は手作業によって行われていりとのことです。訂正を行う場所は、現在、羽田空港にある「(財)日本水路協会」で実施しています。別の機会に見学したところです。そこで、実際に仕事している方に話を聞いたところ、「見た目は簡単そうでも非常に神経を使う仕事で大変だ!」と言っておられました。
大きな訂正のものに関しては新しい海図を発行します。そして古い海図はただのゴミとなってしまうが環境を考え、それで紙袋をつくるリサイクルの工夫を行なっているとのことです。
海洋情報部は海図の他に水路書誌も発行している。これには海図に表現できない港湾・航路・気象・海象の概要を示した水路誌(国内・国外のものがある)、航路標識状況・潮汐や潮流の予報・惑星や恒星位置を示す特殊書誌があるそうです。

海洋情報部は海図の他に「航空図」も発行していました。なぜならば、戦時、中海と航空というのは非常に密接な関係があったからである。しかし現在はもう発行されておらず、その残りもわずかでとのことでした。私たちの「自然地理学」の担当教員のO先生は、「この航空図の大家ですよ」と、情報部の方に伺いました。
またこの他に海洋情報部は海外とも情報を交換し合っているために、英語の海図と言うものも発行している。これは世界共通のものであり使う色が日本語の海図とは異なる。

海洋情報部で働いている女性の方々のお話も伺うことができました。みな海上保安学校を卒業している方々でした。腕がどれだけ細くても片手で(両腕ともに)縄に3秒捕まる試験があることに驚きました。お話を伺った人の中にはつい最近まで船の上で実際に働いていた方がいたことにも非常に驚きました。船の中というのは非常に狭い空間である。その中でたくさん男性がいる中で働くなんて精神的にとても強い方だと感じた。ここでの仕事場の雰囲気も非常に良さそうで、いろいろと多くの社会で問題になる有給休暇や産休などがきちんとされており女性でも安心に仕事ができる空間が作られている。こういったお話が聞けてよく見られるような職業の場とは別な同じ女性の職場状況がみることができよかったです。(ゆき)
*参考文献:海上保安庁海洋情報部 (財)日本水路協会
『海の図いろいろ』
海上保安庁海洋情報部 『海を探る』
href="http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KIKAKU/jhd_history.htm">http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KIKAKU/jhd_history.htm
「海図」の作成過程の説明を受ける
戦後は、民間の商船を中心に日本の経済を支えた海運の重要な海上交通の安全を確保するためいに海洋情報の収集に当たっている。英語名は「Hydorographic Office」。現在でも海洋情報部は、この英文の名称を海外向けに使っている(強いこだわりか?)。海上保安庁は、行政官庁の「国土交通省」に属している。元は「運輸省」にあって、他にも「気象庁」などとともに交通運輸の安全を守る観点から、海上交通に関する安全航行の支援を行っている役所である。航海に関係のあることで、意外に知られていない業務に「潮汐」=海の干満を港別に予測し、発表している。潮の満ち引きは、月と地球の位置関係から生まれるので、天体観測⇒暦を作る作業がこの役所の隠れた仕事である。最近では、海洋法の問題で、海底地形の調査、沿岸域の精密な調査など、領海、排他的経済水域などの線引きでは、極めて重要な役割を果たしている。

今回は、「地図」の視点から海の地図=「海図」を作成する官庁として海洋情報部を見学した。築地は戦前から海軍関係機関が多くあったところ。まさにわが国の「海図」の誕生したところである。2010年、海洋情報部は移転することになっていると言う。移転後は、金融庁?が霞ヶ関から移転してくるという。

海洋情報部内の「海の相談室」にて
「海図」の流通、海事関係を扱い、海洋レジャーでの海洋情報を扱う(財)日本水路協会を見学する。